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THE BEST JUMP TRAINING IN JAPAN

大公開!! 日本一楽しい障害飛越トレーニング

西崎 純郎の日本一楽しい障害飛越トレーニング

西崎 純郎の

日本一楽しい障害飛越トレーニング

この度、オーナーの西崎純郎さんから、様々なお話を取材させて頂きました。
西崎さんは、全日本馬術大会で優勝、また国際大会でも金メダルを獲得するなど、日本の馬術界を代表する選手の一人でもあります。まずはじめに、ウェブサイトのテーマを決めるべく馬のことや、会員さんのこと、日々のトレーニングについてのお話を聞きました。
「なんで馬ってあんな大きな体と細い肢で飛べるんですか?」という何気ない質問から、馬すら乗ったことのない私に、ホワイトボードを使って目をキラキラさせながら話す西崎さんからは、馬と乗り手をHAPPYにしたいという気持ちが溢れ出していました。そこで「この西崎流のトレーニング法をネットに書いたらどうですか?」という提案から、このページを作成することになりました。
素人の私でも「なぜ馬が飛ぶのか?」「安全で楽しい障害飛越とは?」「目指すべき目標は?」が分かりやすく説明されていて、乗ったこともないのに、障害を飛んでみたいと思いました。これから障害飛越を始める方から、すでに競技会に参加されている方まで、幅広くこのトレーニング法をご活用いただけるのではないかと思います。

岡山乗馬倶楽部

ー西崎
障害飛越に限らず、乗馬のトレーニングってスゴイ難しいんですよ。なぜなら、乗馬というスポーツは、10頭の馬がいれば10通りのやり方が存在するんですね。そして10人のトレーナーもしくは選手がいれば、また10通りのやり方が存在します。さらに当然ながら、馬は生き物なので状態は日々変化し、今日は昨日とは違い、明日もまた違うんですよ。つまり、乗馬に「完全なマニュアル」は存在しないんです。もしあるとするならば、それは個々の馬や乗り手の特性、また日々変化する精神的・肉体的変化を無視した強制と強要ということになるんですよね。だからこのトレーニング法も「こうやれば馬はこうなる」「乗り手はこうなる」というマニュアルではない、ということをあらかじめおことわりしておきます。僕自身も、様々なタイプの馬や乗り手のトレーニングをさせてもらうなかで、試行錯誤している真最中なのでね... 毎日行ってる僕のトレーニングは、世の中に数えきれないほどあるやり方の中の一つにすぎないんです。

ー三宅
なるほど。だから乗馬のトレーニング法みたいなのは、探してもなかなか見当たらないんですね。西崎さんはどこでこういった馬や人のトレーニングを学んだんですか?

岡山乗馬倶楽部

ー西崎
恩師と呼ぶべき人とはたくさん出会いましたが、いま現在指導を受けていたり、これから紹介するトレーニングのベースになっているのは、馬術の本場オランダで活躍されている波里有輝氏、波里氏の友人で元オランダヤングライダーチャンピオンのSander van Laar氏らです。また乗馬振興協会の指導者巡回指導でお世話になったJRA馬事公苑の戸本一真氏、2010年ケンタッキー世界選手権に出場された福島大輔氏が、馬術情報で連載していた「障害トレーニング in ベルギー」なども参考にさせてもらってます。

ー三宅
オランダチャンピオンとか世界選手権とかって聞くとすごく難しそうで、日本で楽しみや趣味としてされてる方には必要ないように思うんですが...?

ー西崎
みなさんよくそう思われるのですが、じつは、彼らがやってることのほうがよりシンプルでより分かりやすいんです。乗馬の歴史が違いますからね。現に岡山乗馬倶楽部の会員さんは、これから障害飛越を始められるシニアやジュニアの方から国体とか全日本に出場する選手まで、同じトレーニングを行っているんですよ。
違うのは乗り手や馬のレベルに合わせて飛越する、高さやスピード、歩数などをアレンジしているだけなんです。

ー三宅
そうなんですか?同じトレーニングとは驚きです。それならば日本で乗馬されてる方にも喜んでもらえそうですね。ではさっそくその西崎流トレーニングを教えてください。

ONE

1.フラットワーク

乗馬をある程度されている方なら、「フラットワーク」という言葉をご存じだと思いますが、障害飛越をする前の、準備運動の事をそう言います。
本当は「フラットワーク」をお話しする前に、「乗り手のバランス」から話たいところなんですが、バランスのとり方はじつに人それぞれなんですね。乗馬入門雑誌などにもよく書かれてるんですが、文字や映像で伝えるのは非常に難しいんです。本当は「バランス」というのが一番大事なことはよく分かっているんですが、これからやっていくトレーニングは、順を追ってバランスも良くなっていくものですので「わたしはバランスが悪いから障害を飛ぶのは無理」とあきらめないで、まず一歩を踏み出してもらいたいです。
それでは障害飛越の準備運動「フラットワーク」をはじめていきましょう。
この「フラットワーク」も馬により、人により、その時によりさまざまな方法があります。専門用語ですが同内、腰内、ハーフパス、反対駈歩、踏歩変換など基本的な馬場運動はフラットワークべースであり、できているに越したことはないです。特にいまヨーロッパでは、フラットワークという言葉ではなくドレッサージュワーク(馬場作業)と言われるほど、ベースとなる馬場運動は障害飛越においても非常に大切であると認識されています。その証拠に、世界で活躍する障害飛越ライダーのほとんどが馬場のトレーナーを雇って、トレーニングのベースとなるドレサージュワークを学んでいるのです

岡山乗馬倶楽部

僕自身も、ドレッサージュワークをシュタール・ジークボルト氏の馬宙の中村公子氏や内田雄一氏に定期的に指導してもらっています。またハリー・ボルト著「ボルト氏の馬術」、北原 広之著「JRA DressageTraining」の2冊はトレーニングで悩んだ時にはすぐに開いています。2冊とも写真やイラストが豊富で、とても分かりやすく書かれているので参考にしやすいと思います。

ちょっと専門的な話が続いてしまい「やっぱり難しくて私には無理そう」とあきらめないでくださいね。決してこれらが完璧でなくては障害を飛んではいけないという訳ではありません。フラットワークを簡単に言うと、「ハンドル・アクセル・ブレーキ」が正常に機能するかどうかです。そして高いクラスになるほど、その性能がより高度でなくてはならないということです。障害のコース走行をより正確に、より速いタイムでゴールするためには馬の飛越センスだけに頼らず、日々のドレッサージュワークスキルが乗り手にも馬にも求められていくということです。その事を頭の片隅に置いておいて、現段階ではシンプルに「ハンドル・アクセル・ブレーキ」の性能がある程度確認できたら、次のトレーニングに移りたいと思います。なぜなら、次に続く2と3のトレーニングはこれらの確認作業です。2と3のトレーニングを行うことで「ハンドル・アクセル・ブレーキ」性能も必ず良くなりますので、これから障害飛越を始める初級者の方から、すでに競技に参加されている上級者の方まで、まずは次のトレーニングを始めてみてもらいたいと思います。

岡山乗馬倶楽部

それから中級者以上の方はフラットワークの最後に、馬体がこのような、頭を下げて背中と腰を伸ばした姿勢がとれるように心がけてください。これこそが、障害を飛ぶ馬が空中で必要な飛越姿勢になります。

TWO

2.ハンドル性能の確認

繰り返しになりますが、障害飛越に限らず馬術競技では、どれだけ馬を自由自在にコントロールできるかということを試されています。決して、それぞれの馬が持つ技の速さや飛越センスを競っているわけではないんです。これから始まるトレーニングは「いかに愛馬を自由に操り、楽しく障害を飛べるか」を目的としています。例えすぐに出来なくても馬を責めたり、乗り手の技術を責めたりせず、いつもその目的を忘れずに取り組んで下さいね。さあ、ではハンドル性能の確認から始めましょう。ハンドルというと曲がることばかりをイメージしてしまいますが、真っ直ぐ走れるのもハンドル性能です。まずは馬が、人の両脚と両拳の間から前後左右にはみ出ないかを確認していきましょう。それには円状に置いた3本の横木を使います。あくまで参考ですが間隔はこうです。

岡山乗馬倶楽部

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必要に応じて距離や角度もアレンジしてみてください。

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はじめは速歩からでも常歩からでも構いません。馬が外側に膨らんでいったり、内側に倒れてきたりしないように、そして背を張って慌てて速くなったり、頭が上がって遅くなったりしないよう、きちんと馬が頭を下げて背中と腰を伸ばした姿勢(馬体が弧を描くように)で大きくまたいでいくように気をつけましょう。

岡山乗馬倶楽部

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このトレーニングにおいて馬は、内方後肢を踏み込んで背中と腰を使わざるを得ないんですね。なので人は馬のキ甲あたりでシートを軽くして挙をゆずってあげましょう。

このトレーニングではハンドル操作だけでなく、馬の筋力と柔軟性の強化、障害飛越時の乗り手のバランスも良くなります。何度か繰り返してやってもらうと、馬の動きが弾んで、パワーが溜まってくるのを実感できるはずです。僕らはどんな馬でも日々のフラットワークの一環として取り入れています。またポニーであっても同様のトレーニングを行っています。

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THREE

3.アクセル・ブレーキ性能の確認

次は、アクセルとブレーキ性能の確認を行いたいと思います。
今度は直線状に等間隔の横木を3本用意します。

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これも参考までに、間隔はこうです。馬場の都合でこの距離を取れない場合は3mずつ減らせばよいです。ちなみに僕らも馬場の都合上、20.5m間隔にしています。

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では始めていきましょう。まずは6歩・6歩にトライしてみましょう。(参考動画あり)

まずは、さきほど2で行ったパワーの溜まった証歩を準備し、そのエネルギーが正しく前方向に流れているのを確認しましょう。回転では同じく2で行った両脚と両挙を意識して直角に曲がります。そして横木の前後で馬が左右によれたりせず、手前が変わったりもせず、 横木をまたぐ時に乗り手は、2の時のように軽いシートとゆずった挙ができればグッドです。
1~2本目と2~3本目のスピードや馬のテンションが変わらないように気を付けましょう。また踏切地点を合わせるトレーニングにもなります。
(参考動画あり)
さあ次は、7歩・7歩に挑戦してみましょう。

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馬のストライドをより収縮させるためには、6歩・6歩の時よりも脚とシートによる推進が必要になります。でなければ速歩になってしまったり、手前が変わってしまったりするので、脚とシートと拳を連動させることに注意して行ってください。できることなら、これから競技会でクロス障害~60cmクラスにチャレンジする方は、ここまでのトレーニングをマスターしておきたいところです。障害飛越ではほとんどの場合が、飛越の回数を重ねるごとに馬のバランスが崩れて、走行後半になるにつれスピードが増していきます。終盤まで馬と息を合わせて楽しく走行するためにとても大事なトレーニングになります。

このトレーニングで行ってる21mまたは20.5mという距離間ですが、競技会では5歩の距離になります。ですので、次は競技会だと思って5歩・5歩で走ってみましょう。 (参考動画あり)

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競技会ではこのストライドとスピードを求められますので、しっかりと覚えておきましょう。5歩・5歩になっても、3本目をまたいだ後は真っ直ぐにブレーキをかけ、しっかりとパランスを整えてから回転しましょう。(参考動画あり)

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競技経験者で80cm~100cmクラスに出場してる方たちは、落ち着いてこの5歩・5歩が出来るように感覚を養っておきましょう。今度は1本目から2本目までを6歩、2本目から3本目までを7歩、というように歩数を変えてみましょう。(参考動画あり)

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先ほどまでより短い時間で馬を制御することが求められます。このときも同じく、速歩になったり、手前が変わったりするのはNGです。そしてできることなら横木を踏み切る時は、軽いシートとゆずった拳が望ましいです。そして次は6歩→8歩、6歩→9歩、6歩→10歩というようにトレー ニングを進めていきます。ここまで出来るようになったら、さらに難易度を上げてみましょう。今度は5歩→6歩、5歩→7歩、5歩→8歩、5歩→9 歩、5歩→10歩といった具合です。もちろん、逆の8歩→5歩、9歩→5歩、10歩→5歩も同じく出来なきゃいけないですね。このようなトレーニングが進めば進むほど、競技会ではより高い障害をより速く走りより小さく回転で きるようになります。80cm~100cmクラスでも上位を目指す方や、日本馬術連盟の公認競技会(110cmクラス~)に参加を目指す方は、6歩→8歩、8歩→6歩までは習得しておきたいですね。ちなみに、全日本に優勝したドリーム・ハート号は5歩→12歩、12歩→5歩まで行うことができます。(参考動画あり)

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ジャンプオフで速く走り、小さく回転できるのはこれだけアクセルとブレーキ性能が必要だという証明にほかなりませんね。
岡山乗馬倶楽部で会員さんに乗っていただく障害飛越馬たちは、5歩→10歩、10歩→5歩をいつもインストラクターが乗って行えるように調整してあります。
もし指導者の方がこの話を聞いてくれるなら、最低でもその程度は自分が乗って行えるようにトレーニングをしてから、会員さんに乗ってもらうようにして欲しいですね。
そしたら絶対に「乗りやすい」って喜んでもらえますよ!

1でお話ししたフラットワークは、2と3が進むことで障害飛越に必要な「ハンドル・アクセル・ ブレーキ」の大体がまかなえるようになると思いますので、これらのトレーニングはフラットワークの一環として行ってください。
岡山乗馬倶楽部の障害飛越馬場には、2と3で使用する横木はいつも必ず置いてあります。地味なトレーニングですが、とても大切なポイントなので日々くりかえしてやってみてください。

FOUR

4.キャパレッティの通過

ここからは、いよいよ障害飛越練習と言いたいところですが、飛越の前段階として僕らはいつもキャパレッティ通過からはじめています。そうすることで馬も人も、よりリラックスした状態で飛越できるようになるからです。(参考動画あり)

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背を張りやすい馬や、乗り手のバランスに自信がない場合は軽速歩でも全然OKです。ここでは馬が障害を飛ぶのに必要な、頭を下げて背中と腰を伸ばした姿勢(よくスコープとかバスキュールと呼ばれます)と、飛越時に乗り手が空中で必要なバランスのトレーニングになります。

慣れてきたら今度は、地上のバーをカップにかけてみましょう。
まずは斜めからでこのような順番でかけていきます。

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高さは20cm程度で十分です。僕はそれ以上をすることはありません。(参考動画あり)

バーをかけることで、馬体はよりスムーズに伸びたり縮んだりを繰り返すようになります。そしてこれこそが障害を飛越する時のパワーの源になるので、これまでのトレーニングと同じく、日々のフラットワークの一環として、全日本に出場するヨーロッパ馬からジュニアが騎乗するポニーまで同じ距離間隔で行ってます。ただし、必ずしも最後の、全部垂直にかかったところまで出来なくても大丈夫です。まずは5本を斜め交互にかけて通過できるところを目指して、様子を見ながら少しづつ難易度を上げていきましょう。なぜ11本なのかは次でご説明します。

FIVE

5.ジムナスティック飛越

お待たせしました。ようやく飛越練習をしたいと思います。5つ目の支柱をクロスス障害にしてみましょう。その際、3つ目と4つ目の支柱にある横木をイラストのようにします。

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それまでのトレーニングで柔らかくなった馬体を大きく使って、飛越前の最後の一歩を力強く踏み切らせるイメージです。(参考動画あり)

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速歩から飛越することで、勢いやスピードではなく、馬体に溜まったエネルギーが解放されることで飛んでいくというのを、馬にも乗り手にも覚えてもらいたいと思います。これから障害飛越をはじめる馬や乗り手は、ここまでをくり返し練習してリラックスした状態でリズムとバランスよく飛ぶことを体得しましょう。

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競技経験者で80cmクラス以上に出場される方たちは、この次のバウンス飛越へと進んでいきましょう。1つ目と2つ目、3つ目の支柱にある横木をイラストのようにします。(参考動画あり)

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馬も乗り手もリラックスした状態で、エネルギーが正しく前方向に流れている(速くなったり遅くなったりしない)のが確認できたら、2番目と4番目を垂直障害にしてみます。

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クロスバーと垂直を組み合わせることによって、馬が自然と障害の真ん中を選んで飛越するようになってきます。(参考動画あり)

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ちょっと難しく言ってしまいますが、このバウンス飛越はプライオメトリック法といって、運動力学上もとても理にかなった、馬と乗り手の筋力アップとバランス強化法なんです。馬と乗り手にとって無理のない高さで良いので繰り返して行ってみてください。(参考動画)

SIX

6.高さと幅の飛越練習

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バウンス飛越を落ち着いて出来るようになったら、このようにして5つ目の支柱を垂直障害にしてみましょう。

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ここまでのトレーニングにより、リラックスした状態で馬のエネルギーが正しく前に向かっているはずなので、普段飛ぶよりも簡単に感じられるはずです。また、横木により距離間もコントロールできるので、踏切位置を心配することなく安心して飛越することができると思います。(参考動画あり)

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とくに馬や乗り手が、高さやオクサーの幅にチャレンジする時には、この方法で行うことをお勧めします。それでは次はオクサー障害にしてみましょう。4つ目の支柱を移動します。(参考動画あり)

幅のトレーニングは低い高さで行い、馬が十分に幅を飛び抜けていくバネを作ってから高さを上げていきます。オクサー障害を飛越していく順番は「低い段違いオクサー」→「信をつけた低い段違いオクサー」→「幅をつけて高さを上げた段違いオクサー」→「幅を半分程度に戻した平行オクサー」がセオリーです。よく見かけるのは、高さが高くなってから幅を広げて馬がオクサー障害を怖がってしまうケースです。先ほども言った通り、幅を十分に飛び抜けていくバネを作ってから高さを上げるのが、馬にも乗り手にもリスクが少ないと思いますが、あくまでもこれをセオリーとして、馬と乗り手のレベルやその日の調子で行ってください。

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参考までですが、僕らの場合は80cmクラスまでの人馬は馬だけ、幅のトレーニングを経験のある指導者が乗って行うのみにし、会員さんは幅の小さい段違いのオクサー障害を飛越するようにしています。

オクサー障害では、奥のバーを着地側へずらすことにより、馬が肢を当てたらすぐに落下するようにしておきます。セーフティーカップも使用するべきだと思います。そうでない場合、馬が奥のパーに肢を当てることによって幅を怖がってしまうことがあります。

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このトレーニングも、全日本に出場するヨーロッパ馬から、ジュニアが騎乗するポニーまで行っています。なぜなら、日本の競技会では大きな馬も小さなポニーも同じ距離間隔で走行しなければならないからです。(ヨーロッパなどではポニーのみが参加する競技会があります)

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大きな馬は縮まったストライドで、また小さな馬は伸びたストライドで飛越することをインプリンティングしておきます。そうすることで、競技会に出場しても馬の大小やストライドの広狭に関わらず、スムーズな走行がしやすくなると思います。(参考動画あり)

また、これは高さや幅のトレーニングだけでなく、コンビネーション障害(ダブル障害・トリプ ル障害)のトレーニングにもなります。クロス、垂直から、最後の障害を飛ぶまでの、ツーストライドを馬がしっかり前に出てくれて、障害の向こうがわに「飛び抜けていく雰囲気」をいつも作っておきましょう。それこそがコンビネーションやオクサー障害で言われる、スコープやパスキュールというものです。

SEVEN

7.ストレート&ベンディングライン練習

(1) エネルギーを解放しない状態
ここからはコース走行の基本となる、ストレートラインと回転を含むペンディングラインの練習です。ラインになったからといって勢いをつけて障害に走りこんできたり、馬のバランスを整えないまま拳でガチャガチャしながら飛越をさせては絶対にダメです。まずは低い障害を使って、それまでのトレーニングで養った馬のパネやパワーを壊さないよう、はみ出させないように一つずつ、落ち着いてまっすぐ障害に向かうことを心がけましょう。参考までに障害の配置と距離間隔はこちらです。

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初級者の方は横木からでもクロス障害からでも大丈夫です。馬も乗り手も、飛越よりも、コントロールに集中できる程度の高さや幅で行いましょう。参考までに僕の場合は、全日本に出場するような馬でも80cm程度までで行っています。

ここでは3で行ったトレーニングを思い出しながら次の順番で飛越してみましょう。
(ア) まずはパワーの溜まった駈歩を準備し、そのエネルギーが正しく前方向に流れているのを確認。
(イ) 回転では両脚と両挙から、馬を前後左右にはみ出させないことを意識して直角に曲がる。
(ウ) 飛越の前後で馬が左右によれたりせず、手前が変わったりもせず、障害を踏み切る一歩手前では軽いシートとゆずった挙。
(エ) 着地後はただちにバランスを整え、できるだけ短い時間で(ア)に戻るを繰り返して行います。この時に障害間はできるだけたくさん歩数を入れ、回転では四角く曲がり、決してスピードや勢いではなく、溜まったパワーのみを使って飛越するイメージです。(四角く曲がるイラスト)

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もし、障害の前で馬がパランスを崩して速くなるようなら、速歩が常歩にして障害の前まで進んでから停止します。(参考動画あり)

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これはいきなり止めてしまうと、飛越に必要な最低限のエネルギーまで完全になくなってしまうためで、速歩や常歩をいれることにより、あくまで前に流れるエネルギーはキープ出来るようになります。逆に障害の前でパワーが溜まりきらず、速歩に落ちてしまうようなら巻き乗りをします。(参考動画あり)

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巻乗りの時間を使って(イ)を再確認するようにしましょう。ストレートラインの次は回転を含むベンディングラインの練習です。(参考動画あり)

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やらなきゃいけないことは全く同じですが、回転運動が入ることでさらにバランスは崩れやすくなります。中級者以上の方はこのような直角に曲がるペンディングラインにも挑戦してみましょう。(参考動画あり)

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最後にストレートライン・ペンディングラインを組み合わせて、コース走行をしてみましょう。(動画)

スピードやバランスが、いくつ飛んでもいくら回転しても変わらないように気をつけながら 10障害から20障害続けて飛んでみます。
初級者上級者関わらず、往々にしてコース走行では後半に馬のパランスが崩れて何らかのトラブルを起こしてしまいます。このようなトレーニングを繰り返して行うことで馬も乗り手も着地後、「ただちにバランスを戻さなければいけない」というのが刷り込まれていくようになってきます。

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(2) エネルギーを解放してHAPPYに走る
さあ、ようやく気持ちよく走れる時間がやってきます。
中級者以上の方は、先ほどまで使っていた障害にコンビネーション障害を加えてみましょう。

コンビネーション障害を飛越するにはセオリーがありますので、初めに確認しておきます。
普段のトレーニングでは、イラストのような2間歩のダブル障害を取り入れてます。なぜ2歩かというのと、距離間隔は10.5メートル以上なのかというと、この時間とスペースを使って、勢いではなく馬に考えさせるようにするためです。さらに一方をオクサー障害、もう一方を垂直障害にすることで、垂直障害からのコンビネーション障害の進入の仕方と、オクサー障害からのコンビネーション障害の進入の仕方の違いを明確にしておくんですね。

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まず、垂直障害からオクサー障害のコンビネーション障害を飛越するセオリーですが、パワーの溜まった斬歩を準備しますが、進入の前にギアを一つ落とすつもりでゆっくり丁寧に、一つ目の垂直障害に飛び込みます。着地と同時にシートを軽くし、挙はゆずってあげて、両脚を使って2歩をリズムよく、「高さと幅の飛越練習」で行った「飛び抜けていく雰囲気」を作り出しましょう。(参考動画あり)

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短い距離間隔でも、馬がしっかりとハミを追いかけて幅を飛び抜けるトレーニングになります。反対にオクサー障害から垂直障害を飛越するセオリーですが、同じくパワーの溜まった証歩を準備しますが、幅を飛び抜けられる大きく力強いリズムで、一つ目のオクサー障害に飛び込みます。着地と同時に深いシートと両挙と両脚を使って、2歩の間にギアを一つ落とすようにします。先ほどまで行っていた「ただちにバランスを戻す」を思い出してやってみましょう。(参考動画あり)

このセオリーを知ってトレーニングをしておけば、競技会で距離間隔の難しい、ダブル障害やトリプル障害があっても、慌てずに落ち着いて攻略できると思いますよ。
ちょっと難しく言ってしまいましたが、競技会で、80cmクラス以上にチャレンジされる方たちは知っておいたほうが良いと思います。分かりやすく言うと<垂直→オクサー>は待って進入、あいだで前!<オクサー→垂直>は元気よく飛び込んで、あいだで待つ!ということです。業界用語なので、初級者の人は?かもしれませんね(笑)

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さあ話を戻しますね。競技会と同じく、24.5mは6歩で27.5mは7歩で気持ちよく走ります。
このトレーニングではあまり細かいことや障害の落下を気にせず、とにかく笑顔で楽しく飛んでください。(参考動画あり)

初級者の人は、歩数は気にせず、バランスとコントロールが取れる範囲内で良いですが、とにかく合言葉は「HAPPY」です。リラックスして「パカラッパカラッパカラッ」と気持ちよく走りましょう。ここまでのトレーニングで馬も乗り手も、正しい障害へのアプローチや着地後にバランスを整えることが刷り込まれているので、気持ちよく走っていても正しいラインと距離間が分かり、馬はコントロールがしやすく、落ち着いていると思います。いままでの地道なトレーニングのすべては このためにありました。

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ここでは障害の高さや幅も出場する競技会や馬のレベルに合わせて、上げてみてください。
そして競技会で上位入賞を目指す人馬は、最終的にこんなスピードトレーニングにも挑戦してみてください。(参考動画あり)

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ショートカットの練習用に、パイロンを置いたりして、わざとアプローチラインを難しくしています。
当たり前ですが、競技会で勝つためには人より速く走り、人より小さく回転し、人が通らないショートカットをして、なおかつ落下も拒否もしてはいけません。しかしそれは、決して馬の肢の速さや乗り手の持って生まれたスピード感覚ではなく、日々のトレーニングでこのような訓練をかさねているので、競技会という場で自信をもってチャレンジできるのです。(参考動画あり)

ただし、絶対に忘れてはいけないのが、あくまでも今はトレーニングを行っている、ということです。速く走り、小さく回転しても馬がバランスを崩さずに、落ち着いて力強く飛越できるかの確認です。間違っても乗り手の気の済むまで走り回ったり、飛び続けてたりするのは絶対にダメです。もちろんここで落下や拒否があるのも当然です。それはそれで良しとしましょう。
参考までですが、こういったスピードやショートカットのトレーニングを行うのは、馬も乗り手も十分に経験があって、それまでのトレーニングを日々積み重ねたうえで、月に1度か2度行う程度です。

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また、競技会にコンスタントに参加できるシーズンは、競技会がスピードとショートカットのトレーニングになる場合が多いので、トレーニングとして自分のクラブで行うことはあまり無いですし、当然ながら初級者の人や体の小さいジュニアライダーはスピードトレーニングは必要でなく、リラックスして「HAPPY」に飛ぶトレーニングを続けてくださいね。(参考動画あり)

この「エネルギーを解放してHAPPYに走る」というトレーニングは、それまで行ってきたことの最終形です。これは僕の私見ですが、日本でトラブルを抱える馬や乗り手の多くは、エネルギーを生み出して溜めておくこれまでのようなトレーニングを行わず、拍車やムチなどをエネルギー源として障害を飛越する、「間違った解放」をくり返すことにより、ルールが崩壊してるように思います。
特に、サラブレッドに乗ることが多い日本人は、馬の感性にまかせて飛ばすばかりで、こういった地道なトレーニングが少ない気がします。しかし、現在の障害飛越で主流のヨーロッパ馬たちは、パワーはもちろんですが、冷静でとにかく頭が良いです。正しい順序をふんでいなければ、その大きなパワーは誤った方向へ使われることになります。ヨーロッパ馬が難しいなんて言われるのは、それが理由です。ただしこれが、感性が強く体が弱いサラブレッドの場合には、無理をして故障を起こします。これが、僕がどんな障害馬も最終的にHAPPYに走るために、これまでのトレーニングが必要だと思う理由です。
もう一つ付け加えておきますが、それまでにきちんとしたトレーニングを行っていない多くの場合は、こういったトレーニングをはじめると一度スランプに陥ります。僕自身もオランダで研修を受けてからの半年間はダメダメでした。
人間の生活習慣もそうですが、それまでの習慣を変えることで、初めはどこかに弊害が起きることがありますよね。「ダイエットをはじめたら体調をくずした」「禁煙をはじめたらイライラがおさえられない」といって、途中止めになったという話はよく聞きますね。馬や乗り手のトレーニングにも同じことが言えるのです。それまで馬と乗り手の感性だけで飛んでいた場合、落ち着いて馬の体と頭をたくさん使わせることで、冷静になって急に障害を恐怖に感じて止まったり、力の入れどころが分からなくなって落下が続いたりということも出てきます。そんな時すぐに「このやり方は合わない...」「自分の乗る馬はそういうタイプじゃない......」と思ってしまわないでください。はじめにも言った通り、乗馬においては「お湯を注いで3分待ったら出来上がり」というような方法は存在しません。しかしながら、日々のトレーニングは決してウソをつくことはないのです。上手くいくときもあれば失敗するときもあり、すぐに結果につながることもあれば、スランプの時もあります。
それもこれも全部含めて愛馬と共に楽しんで「HAPPY」に続けていくのが乗馬なんですよ。って、僕はいままでどれくらいしゃべってました?(笑)

ー三宅
そうですね...だいたい2時間ですかね...(笑)
でもすごい面白かったです。聞き入ってしまったのであっという間でしたよ。
何を考えて何をすればよいのか、乗ったことない私も分かったような気になりました(笑)
そうなると今度は競技会でこのトレーニングの成果を発揮したくなりますよね?
ー西崎
そうですね。「競技会なんて私には無理」と決めつけないで、練習の成果を確認する目安のつもりで 気軽にチャレンジしてみてほしいです。そうすると、また一つ、乗馬の楽しさが増しますよ。それぞれの乗馬クラブさんが、部内で競技会を開催してる場合もあると思いますので、初級者の方は、そこからチャレンジされるのが良いと思います。ただ、みんながみんな参加しなければいけない、ということでは決してありませんからね。岡山乗馬倶楽部の会員さんでも、競技会には参加しないけど安全に障害飛越を楽しむために、このトレーニングを日々頑張っておられる方もたくさんいますので。
ー三宅
また競技会ではいろいろと、全日本チャンピオンならではの考え方ややり方がありそうですね?
ー西崎
そんなことないですよ(笑)
いままでのトレーニングにそってもっと「HAPPY」に走って飛ぶだけですから(笑)

EIGHT

8.さあ!競技会に参加してみよう!

(1)馬の輸送日
では部内の競技会ではなく、馬術競技場へ出かけると仮定してお話ししますね。部内でも、馬術競技場へ出かけるのもやることは一緒なのですが、競技場へ出かけたときのほうが、気を付けることたくさんあるので、ここまでいろいろと、馬も乗り手もトレーニングを頑張ってきましたよね。だから競技会はビクニックだと思ってください。これは乗り手だけでなく、馬にもそう思ってもらえるような環境を作ってあげたいですね。

岡山乗馬倶楽部

僕が一番いけないと思うのが、競技前だからといって、トレーニングで今まで要求しなかったことを急に求めたり、人間がメンタルを乱して急に違うことをはじめたりすることですね。たまに、馬運車(馬を運ぶトラックやバス)に乗らない馬を見るんですけど、それってね、馬運車に乗って競技場に出かければ、普段より苦しいことを求められるってのを、馬が知っているからっていうのもあるんですよ。だから行きたくないってね。馬運車を見たら、ルンルン気分で乗ってくれるのが理想ですね。

岡山乗馬倶楽部

さあ競技場に着きました。輸送時間が2~3時間程度なら少し休憩を取った後に、軽く運動をしたほうが良いと思います。ただし、さっきも言ったように強い要求はせずに、その場の雰囲気に慣らしたり、輸送で、馬がどこか体に違和感がないか確認する程度の運動がベストだと思います。

岡山乗馬倶楽部

緊張しやすい馬や背を張りやすい馬の場合は、調馬策(騎乗せずにロープで運動させる)も効果的だと思います。
もし、5時間を越えるような輸送の場合は、僕だったら引き運動だけですね。

(2) 競技当日(下見・準備運動・本番)
競技当日の朝を迎えました。パワフルな馬や緊張しやすい馬は、朝のうちに一度フラットワークをしておくようにしています。競技直前の準備運動では音楽や観客などで、馬も緊張していつもよりテンションが高かったり、準備運動場が混雑していたりもするので、充分にハンドル操作と、アクセルブレーキ操作を確認できないこともあります。朝の静かで空いているうちに、しっかり確認しておくことで、馬も乗り手も落ち着いて競技にのぞみやすいと思います。絶対に直前は誰だって緊張しますからね(笑)

岡山乗馬倶楽部

ただし忘れちゃいけないのが、パフォーマンスが高まるピークは競技のとき、ってことです。やりすぎて馬を疲れさせないことが大切です。
競技開始の15分前には、「下見」といって、人だけがコース内に入ることが出来ます。コースの順番を覚えるのもそうですが、この下見中の15分間は、頭をフル回転させなければダメなんです。障害飛越のコースってね、馬の運動学や、生態学を良く知ったコースデザイナーっていう資格を持った人が、馬をちゃんとコントロール出来てるかとか、馬が従順に乗り手の指示を受け入れるかを試すために、たくさんの落とし穴があるんですよ。

歩きながら、その落とし穴を見抜いて、愛馬が最も「HAPPY」に走行できるにはこうだ!っていうプランを立てて、それを実行するために、これから準備運動をどうするかってところまで、考えなきゃいけないんですよ。つまり、参考までですけど、距離間隔が狭いラインが多かったり、小さな回転が多いコースでは、馬のバネを縮みやすくした準備運動が必要ですし、距離間隔が広いラインが多くて、緩やかな回転が多い場合は、馬のバネを伸ばしやすくした準備運動が必要なんですね

参考動画クリックで再生できます

下見=順番の記憶ではないんですね(笑)これも参考までに、一般的なコースの説明ですが、コース前半はリズムに乗りにくく、そういった走行前半でのタイトな回転や、微妙な距離感は、落下や拒否をしやすくなります。(参考動画あり)

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コース後半では、馬のバランスが前に崩れている場合が多く、距離間隔の狭いラインや、コンビネーション障害などで失敗しやすくなります。(参考動画あり)

また、コース中に、馬が物見をしそうな派手な障害や、リバプール・水郷障害などは、入場してベルが鳴ってから、スタートまでの45秒間を使って、あらかじめ馬に見せておいてあげるんですね。

岡山乗馬倶楽部

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その他にも、旗や観客席、建物、タ日や西日、風、水溜りなど障害以外にも気を付けておくべきことはたくさんあるんです。

さらに、入退場門の場所も、よく確認しておいた方が良いです。馬は群れで生活をする動物で帰巣本能もあります。ほかの馬たちがいる準備運動場へ向かっていけば、馬は前のめりになって加速しやすく、逆に背を向けていればリズムが悪くなります。(イラスト)

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入退場を背に向けてのコンビネーション障害や物見障害は、注意が必要です。こういった馬の本能も含めて下見中、頭をフル回転させるんですね。

下見時間が終了して走行プランや注意するポイントが頭に入ったら、準備運動をはじめます。(出番が早い場合は下見の前にある程度済ませておきます)
競技前の準備運動で最も大事にしなきゃいけないのが、馬も乗り手も前向きな気持ちで楽しく入場するということです。下見のプランに合わせてシンプルに、ハンドルとアクセル操作を確認したら、できるだけ準備運動で障害を飛ぶ回数を少なくして、馬も乗り手も集中力と体力を保ったまま出場できる、というのが準備運動の大いなる目的ですね。
馬や乗り手によってさまざまですが、僕が通常おこなう準備運動での障害飛越は、まず軽く体がほぐれたら、クロス障害を2~3度飛越して、馬がしっかり乗り手と障害に集中していて、なおかつリラックスした状態であるかを確認します。この時にはD(1)で行ったエネルギーを解放しない状態でまっすぐ飛越し、着地後はすぐにバランスが戻るかを、トレーニングと同じように気をつけます。
続けて、垂直障害を何回か飛越しますが、高さを上げるにつれて準備する駈歩のエネルギー量を増やして、決して障害前で走りこんでいったりしないで、大きく風船が浮かぶようなイメージです。この時も、障害前はしっかりと馬にパワーが溜まって、着地後はすぐにバランスが戻ってくることを確認しながら行います。
続いて、オクサー障害を飛越します。
基本的な順番は、Eのオクサー障害のセオリーと同じです。
「低い段違いオクサー」→「幅をつけた低い段違いオクサー」→「信をつけて高さを上げた段違いオクサー」→「幅を半分程度に戻した平行オクサー」
6のくり返しになりますが、オクサー障害飛越のポイントは、低い段違いオタサーの状態で幅を広げることと、奥側のバーは着地方向にずらして、馬の肢が触れた時には、簡単に落下するようにして馬を怖がらせないことです。

競技前の準備運動はやはり普段と違い、馬も乗り手も緊張して踏切位置が近くなることがあります。そんな時は、踏切るスペースを認識させるために、グランドバーを50センチから1メートル手前に出してあげます。こうすることで十分なスペースを持って、大きく体を使って飛越させることを確認しておきます。

さあ準備は万端です。ここまで来たらゴチャゴチャ考えても仕方がないので(笑)愛馬と共に「HAPPY」に走ってくるイメージだけしておきましょう。
できれば、時間に余裕を持たせて準備運動をすすめ、ここで馬も乗り手も一度リラックスして、他の人の走行をみながら、自分の走行プランも確認しておきましょう。
入退場門から待機の呼び出しがきたら、最後に垂直障害を1回か2回飛越します。コース走行の1番障害だと思って、馬と乗り手が、気持ちよく障害に向かっていけるかを今一度確認して、入場門で待機します。
これは中級者以上向けですが、落下しやすいタイプの馬であれば、この最後の垂直障害の飛越はいいリズムよりもギアを一つ落として、なおかつ踏切るスペースも少し狭くして、乗り手は馬をヘルプしないように踏切る前に拳をゆずりましょう。
よく、無理に落下を誘うために、最後の垂直障害を走りこんで飛越させているのを目にしますが、これは逆効果になる場合がほとんどです。そんなイメージを出場前に植え付けられては、コース走行中の馬は、余計に背中と腰を硬くして、前肢の上がるスペースと、後肢が返る力の先を失くしてしまいます。乗り手の策に馬を嵌め込もうとしないで、あくまでも馬と乗り手が、「HAPPY」にコース走行するための準備として、馬に気づかすきっかけを与えてあげるだけです。

愛馬と自分の名前が呼ばれたら、自信をもって入場しましょう。周りを見渡しながら観客や審判に「素晴らしい走行をよく見ておけよ!」と心の中で叫びましょう(笑)
スタートのベルが鳴ってから、スタートラインを切るまでには45秒の時間が与えられています。中級者以上の方は、馬が物見をしそうな障害物やショートカットをするライン、気にするかもしれない、花・人・建物などを、怖くないものだと理解させて、飛越に集中させる時間として使いましょう。ただし、あまり難しいことは考えずに、大きく深呼吸をしてからシンプルに、馬と自分が「HAPPY」に走行することを最優先に考えて、気持ちよくスタートを切りましょう。これは初級者から上級者まで、絶対に不変です!

無事に走行を終えたら、まずは愛馬をしっかりと褒めてあげましょう。ご褒美にお砂糖をあげる場合もあります。
腹帯を1つゆるめて準備運動場に戻り、数分の軽速歩をしてから常歩をして、馬の息が収まるのを待ちます。馬という動物は、運動により体全体に血液をめぐらすので、走行が終わったからといって、すぐに馬から降りて厩舎に帰してしまうと循環不全を起こして、翌日の筋肉疲労や腫れなどが起こりやすくなってしまいます。
また、コース走行中は、どうしても乗り手は、強い脚や拳を使っているので精神的にも興奮しています。
こういった鎮静運動は、リラックスした状態で、また翌日の競技に集中できるメンタルのためでもあります。

厩舎に帰ってからは、ケガや腫れなどがないかよく注意して、手入れ後には、馬の肢に、パンテージを巻いたりすることもあります。競技場の厩舎では、馬運車の音や歓声、馬の肢音などで興奮して肢をぶつけたり、いつもと馬房の大きさや形が違って、寝起きで肢をぶつけたりすることもあります。バンテージは腫れを予防するだけでなく、そういったケガの予防にも役に立ちます。
馬の手入れが終わったら、乗り手はすぐに、走行のビデオを見ましょう。自分の視点と客観的な視点とでは、感覚に違いがあります。ブラン通りに走行ができたか、愛馬は気持ちよさそうに飛んでいたか、翌日はどんなことに注意が必要かを確認しましょう。

NINE

9.競技会から帰ってきたら

馬術競技場から乗馬クラブに帰ってきたら、成績の良い悪いは関係なく、必ず休ませてあげましょう。どんな馬も精神的・肉体的に絶対に疲れています。とはいえ、筋肉痛の状態でいきなり放牧すると、ストレスから急に解放されたことで、走り回って余計にどこかを痛めてしまうことだってあります。
帰既の翌日は、リラックスした状態で軽く騎乗するか、軽めの調馬策、もしくはウォーキングマシーンなどで運動をしてから、放牧をしてあげるのがベストでしょう。
馬は本来、このようにして暮らす動物だということを忘れちゃいけませんね。
僕の場合は通常、競技会後は最低でも1週間は、このように休養を取ってあげています。

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休養中に与える馬のエサですが、競技後のように疲労しているときには、消化しにくいペレットやフレークの量を減らして、消化しやすい乾草の量を増やしてあげます。これも、早くリフレッシュさせるためにはとても大切です。
それから馬具の片付けも大事です。とくに子どもたちには、道具の手入れやあと片付けをしっかりやってもらうように気を付けています。馬だけでなく、馬具も競技会を共に戦った仲間です。壊れていないかよく確認して、キレイに磨いておくことで、ここ一番の勝負時には馬だけでなく、馬具も助けてくれるのです。

片付けも落ち着いたら、今後のトレーニングや次に参加する競技に向けてスケジュールをたてましょう。
参考までのスケジュールです。

トレーニングウィーク
【1フラットワーク】+放牧
ウォーキングマシーン+放牧
馬休日
【1フラットワーク】+【2ハンドル性能の確認】+【3アクセル・ブレーキ性能の確認】
【1フラットワーク】+【4キャパレッティ通過】+【5ジムナスティック飛越】+トレッキング
【1フラットワーク】+【4キャパレッティ通過】+【5ジムナスティック飛認】+【6高さと幅の飛越練習】+トレッキング
【1フラットワーク】+【7ストレート&ベンディングライン練習】+トレッキング
競技会ウィーク
【1フラットワーク】+【2ハンドル性能の確認】+【3アクセル・プレーキ性能の確認】
【1フラットワーク】+【4キャパレッティ通過】+【5ジムナスティック飛越】+トレッキング
【1フラットワーク】+【4キャパレッティ通過】 + 【5ジムナスティック飛越】 + 【6高さと幅の飛越練習】+トレッキング
輸送日(フレンドシップ競技)
競技会
競技会
競技会

(競技会ウィークでは【7ストレート&ベンディングライン練習】をフレンドシップ競技でトレーニングするようにしています。)

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馬の話ばかりしてましたが、乗り手にも休養は必要です。僕自身ずっと疑問だったんですが乗馬って、馬の事ばかりで乗り手のケアもそうですけど、乗り手のトレーニングとかも絶対大事だと思うんです。乗り手へのマッサージとかストレッチとかトレーニングも、今後は課題だなあと個人的には思ってます。

とまあ、競技会編はこんな感じですかね。
ー三宅
生き物を扱うスポーツならではの着眼点というか、馬目線での考え方や方法があるんですね。でも愛馬とピッタリ息があったときは感動でしょうね。
ー西崎
そうですね。それこそが乗馬の醍醐味だと思います。成績以上にうれしいですよ。
ー三宅
話を聞いてて、途中から気になってたことがあるんですけど、西崎さんのトレーニングでは、よく「HAPPY」という言葉が出てきますよね。これは馬と乗り手が楽しく障害飛越のトレーニングをするために、大事にされているんだと思うんですが、逆に「HAPPY」じゃなくなったら、馬とか乗り手ってどうなっちゃうんですか?
ー西崎
さすがですね。乗馬の本質を突くとても良い質問です。
「HAPPY」じゃなくなったら馬と乗り手がどうなるのか?少しお話しさせていただきます。

TEN

10.「HAPPY」でないとどうなるのか?

馬はご存じのとおり群れで生活をする動物で、20~30頭を1つのグループとして暮らしています。
その中には1頭のリーダーがいて、他の馬たちはそのリーダーに従って動くんですね。
そして、馬は攻撃する牙や、ツノやツメを持たないですから外敵からは逃げるしかないんですよ。
これらの本能と習性を簡単にまとめると、そもそも怖がりでリーダーに依存していたいから、人間を乗せてその指示に従ってくれます。そして嫌なことからは逃げて幸せになるので、トレーニングではその逃げ道の先が求める動きや形ということになります。
例えば障害飛越で説明すると、障害を飛び越えるというのが馬の逃げ道なんですね。飛越して「HAPPY」にならなきゃいけないんです。いままでの話の中でも、障害を踏切る前にはシートを軽くして挙をゆずってあげる、というのはそのためです。途中いくつか悪い例も出しました。拍車やムチをエネルギー源とした「間違った解放」の話や、競技会の準備運動場で無理に落下を誘うために走りこんでくる話は、いざ障害に向いてから馬の逃げ道を力づくでふさごうとしてるんですね。これでは、馬は障害に向いたら嫌なことがあるから障害に向かないでおこう、その前に逃げよう、ということになります。あくまで、馬から生まれるエネルギーを溜めて、障害に向いたら解放してもらえるから、馬は進んで障害に向かっていこうとしてくれるんです。障害を避けたり、止まったりする馬を「なめてる」「やる気がない」なんて言いますが、決してそんなことはありません。障害を飛越することが「HAPPY」だということを、教えてあげれてないんです。また、「踏切位置を大きく間違えた」「空中でハミを引っ張ってしまった」というのを、馬が飛ばなくなった理由にする人もいますが、数えられるほどのミスで飛ばなくなる、というのは考えにくいです。僕はこんな時、よく花粉症に例えて話をします。
花粉を1個や2個吸い込んだからと言って、花粉症になるわけではありません。当然それぞれ個人差はありますが、体内の花粉が一定以上の水準に達したときに、突然発症しだします。これは、馬が障害物を怖がって飛ばなくなるのとまったく同じなのです。それまでは飛んでいた馬が、突然怖がって飛ばなくなるので、直前のミスを疑う気持ちはわかりますが、実はそうではないんです。世界のトップライダーだって、世界大会で踏切位置を間違えてクラッシュしてる様子を見ることがありますが、だからといって飛ばなくなってないんですよ。次の大会ではまた普通に飛んでますから。
じゃあ何で発症してないんですか、っていうのがトレーニングなんです。馬は発症しないように、許容範囲をできるだけ広げます。乗り手は発症水準まで蓄積させてしまわないようにします。これがトレーニングの必要性だと思ってます。何度も言いますが、個体差によって許容範囲が違うというのは分かったうえでですよ。

馬に乗ってる人は誰だって馬が大好きですから、じゃなきゃ乗らないですから。「誰だって馬を拍車でキックしたり、ムチで引っ叩いたりしたくないんですよ!見るのすらイヤなんですよ!じゃあどうしたらいんですか」って。トレーニングを学びましょう。「HAPPY」に障害を飛んでくれる馬にしてあげましょう、ってことだと思うんです。
はじめにも言ったように、今日お話ししたトレーニングは、世の中に数えきれないほどあるうちの一つです。
トレーニングをしていく中でもっと良いやり方を知ったり、気づいたりということはたくさんあると思います。そんな時はどんどん変えていったら良いんです。乗馬にマニュアルは存在しませんからね。
愛馬が『HAPPY」である、ということをコンパスにして考えていたら、間違えることは絶対に無いですから。

【あとがき】
西崎さんの話を聞き終えて、迷わずテーマは「HAPPY」と決めました。トレーニング法と言っても、他のスポーツのような How to ではなく、馬と人をキラキラと輝かせてくれる熱い思いが、そこには感じられました。乗馬とはこんなに素晴らしいものだとは知りませんでした。私も乗馬を始めてみようと思います。

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